はははトーク

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活動報告

2019/04/01

取材協力のお知らせ

『FRaU』(講談社)の2019年5月号に取材を受けました。

p. 28「スウェーデンの予防歯科事情」です。

掲載されたのは、ほんの一部ですが、以下に回答した全文を記載します。





<質問>

スウェーデンは虫歯の最先進国であり、国民の意識も高く、8〜9割が歯医者を訪れているというのは本当ですか?理由も含めて教えてください。

<回答>

本当です。「歯医者に通う」と言うよりも、「歯科医院に通う」と言った方が正確でしょう。歯科医院を訪れる目的のほとんどは、予防のためのメインテナンスで、それを行うのは歯科衛生士だからです。

歯科医院に通うのも、みんなが一年に何度も通っているイメージがあるかもしれませんが、スウェーデンでは、その人のリスク(病気のなりやすさ)に合わせて、3ヶ月に一度から、2年に一度の幅があります。虫歯も歯周病も人によってリスクが様々なので、スウェーデンでは、まず、リスク評価を行い、メインテナンスの間隔はリスクに応じて決められます。

現在、スウェーデンでは0歳〜23歳までは、予防、治療、矯正を含めてすべての歯科医療サービスが無料です。もし、親が子どもをメインテナンスに連れて来なければ、児童虐待(ネグレクト)を疑われて、歯科医師が勧告し、それでも来院がなければ、ソーシャルワーカーに報告します。そうやって子どものうちから歯科医院に行くという習慣がついているのが大きな理由です。

23歳を超えると歯科医療費の自己負担は約7割となります。その時には、小さい頃から通っていたメインテナンスのおかげで口の中に問題がないことが普通なので、少し来院控えが起きますが、それでも8割以上は歯科医院に通っています。とは言っても、せっかく国のお金を使って子どもの頃に培った予防の習慣と、良い口腔の健康が崩れてしまうのは残念なので、10割に改善するために、最近では、リスクの低い人ほど掛け金の少ない保険、つまり若年者に有利な歯科保険を作ったりもしています。

小さい頃から習慣付けられているという理由のほかに、真面目な国民性もあるかもしれません。知識レベルが高く、健康にもよく気を遣う人たちです。歯科医院を訪れると健康が保たれるということがはっきりとしているので、人々が歯科医院を訪れるわけです。



<質問>

スウェーデンでは定期検診が浸透しており、突発的な事故以外で歯医者に駆け込み受診をすることはないというのは本当ですか?理由も含めて教えてください。

<回答>

ないわけではありませんが、非常に少ないです。上述のように、子どものうちは定期的なメインテナンスをしなければいけないような仕組みになっていますが、成人すると自己責任です。1〜2割の人は、駆け込み受診タイプです。

その他大部分には、定期的なメインテナンスが浸透しています。ここで注意してほしいのは、「定期検診」の定義です。定期検診というと虫歯や歯周病の有り無しのチェックだけのようでもありますが、スウェーデンの定期的なメインテナンスは、その他に、虫歯や歯周病のリスク評価、歯磨きの教育、食育、バイオフィルム(プラーク、歯垢)の破壊と除去(PMTCとしても知られている)、フッ化物の塗布などが含まれます。ただの定期検診だけではなく、このような総合的なメインテナンスを定期的に行うことが浸透している理由は、これを行えば、歳をとっても歯をほとんど失わないという研究結果が出ていて、それを歯科専門家も患者さんも知っているからです。誰でも、人生の最後まで、歯を失いたくはないのですね。

スウェーデンは、1960年代は虫歯が世界でも最も多い国でした。そして、研究の結果から、虫歯を詰めたり被せたりしても、虫歯が治ることはなく、詰め物や被せ物の端から虫歯ができて、それが、詰め物や被せ物のやり直しの原因No.1であることがわかりました。同時に、虫歯の原因は何かということもわかり、予防するにはどうすれば良いのかということも明らかになったので、1970年代から、そのような科学の進歩に基づいて、治療型から予防型の歯科医療に転換しました。

このように制度が柔軟に変わった背景は、合理的で、健康意識も高いという国民性のために患者さんたちが賢いこと、そして、平等な社会のために、医師、患者という立場による上下関係がなくて、患者さんがものを言えることがあるでしょう。税金が高いので、それで行われる医療サービスに矛盾(治療をしても、虫歯が治らない、歯を失う)があると、国民は黙っていないと思います。



<質問>

先生の治療方針や姿勢など、特に意識されていることを教えてください。

<回答>

孔子の「己の欲せざる所は人に施す勿れ」というのが、忘れてはならないと思っていることばです。歯科医師として、歯科治療の技術を習得すると、角度をピシッとつけて歯を削ったり、目に見えない根っこの先まで器具を通したり、歯を上手に抜いたりすると、達成感が沸き起こります。特に、複雑で困難で、同業者ができないようなアクロバティック的な処置ができたりすると、高揚感はさらに高まります。でも、自分が患者さんだったら、「先生、そんなことは、私の歯でしないで、模型でしてください。」と言いたくなると思うのです。なぜなら、虫歯も歯周病も予防できる病気だとわかっているのですから、派手な治療よりも、地味でもいいからどうやったら私の歯を守れるのかを教えてほしいのです。それで、患者さんの気持ちを我がこととして考えるようにしています。

私たちは一生をかけて歯について学び、仕事をさせてもらっています。それは、人間社会の中での役割分担であり、他の人が口腔の健康について最先端の情報を知りたくても、そこまで時間が割けなくてできないことを、代わりにしているわけで、その委託によって知り得た情報は余すことなく提供すべきだと思っています。スウェーデンなどでは、日本とは違う方法で確実に虫歯や歯周病の予防ができているということが、日本人になかなか知られていませんでした。その知識のギャップを埋めるために、NPO法人「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」(PSAP)を通して、情報提供しています。

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